
政府が2020年度の予算案を決めた。一般会計の総額は8年連続で過去最大だ。2年連続して100兆円の大台を超えた。
消費税増税で一般会計の税収は過去最高となった。国民に痛みを強いて捻出する財源である。財政再建と社会保障の改善につなげるのが約束だったはずだ。
それなのに、財政の健全度を示す基礎的財政収支は3年ぶりに悪化する。歳出の3割超を国債で穴埋めする構図は、改善の見通しが全く立たない。
<税収が増えても…>
歳出が膨らみ続けていることが主因だ。特に社会保障関連費と防衛費が目立つ。ともに過去最高になっている。
このままでは将来の世代に膨大なつけを回す。必要性と緊急性を検証し、必要な項目に過不足なく支出しているのか。税制は公平性に欠けていないのか。危機感を持って改革に乗り出す必要がある。
基礎的財政収支は、国債発行に頼らず、政策に回す経費を税収でどの程度賄えているかを示す。政府はこの収支を25年度に黒字化する目標を掲げている。
予算案では9兆円超の赤字である。19年度から500億円以上、悪化することになる。
税収と税外収入は計1兆3千億円増となったのに、政策経費が1兆3500億円膨らんだためだ。消費税増税で税収入が増えても、それ以上に歳出を増やせば、財政が悪化するのは当然だ。
収支はさらに悪化する可能性がある。前提としている政府の経済成長見通しは、民間エコノミストから「楽観的で現実的ではない」との指摘が出ている。成長率が見通しより下振れすれば、法人税や所得税が減って、赤字はさらに膨れ上がるだろう。
現時点でも25年度の黒字化目標は現実的ではない。国債を追加発行する事態になれば、財政再建など夢物語になる。
<大盤振る舞いのつけ>
歳出を絞り込んだとは思えない。3分の1以上を社会保障関係費が占める。高齢化に伴う伸びは当初見込みより抑えた一方で、医療や年金を含めた全体が1兆7千億円膨れ上がった。
安倍晋三政権の看板政策として、全世代型の社会保障に取り組む影響も出ている。
幼児教育・保育の無償化は、地方負担分を合わせて、来年度は7800億円程度を見込んでいた。中高所得層の利用者と単価の高い保育所の利用者が想定を上回っており、1千億円以上の上乗せが必要になった。
消費税増税分の一部を充てるはずだったのに、新たな財源が必要になった状況だ。
子育て支援が急務だとしても、無償化は予算の半分が年収640万円超の世帯に回るため、「金持ち優遇策」との批判が出ている。予算を保育士の待遇改善や研修費に回し、「保育の安全性を高めてほしい」との声もある。
消費税増税の批判をかわす“大盤振る舞い”にとらわれ、効果や経費を十分に検証していたのか疑問である。
防衛費は8年連続の増加だ。米側の提示額を受け入れる制度「対外有償軍事援助(FMS)」が過去3番目に多い4700億円となり、全体を押し上げた。
<歳出入の改革こそ>
必要性に疑問がある装備が少なくない。護衛艦「いずも」を「空母化」し、搭載するF35B戦闘機6機も793億円で初取得する。
レーダーで捉えにくいステルス性に優れた最新鋭戦闘機で、「第5世代機」と呼ばれる。A型と合わせ計147機配備する方針だ。専守防衛の日本に必要なのか。
地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」も垂直発射装置の取得費など129億円を計上している。ハワイなど米国のための防衛システムともみられる。予定地の反発も根強い。国会での議論も不足している。取得費を予算化するのは早計だ。
防衛費の増大は財政再建を阻害している。必要性を含めて一つ一つ見直していくべきである。
22年には「団塊の世代」が75歳の後期高齢者になり始め、医療・介護費がさらに膨らむ。
安倍首相は、企業収益の改善を税収増につなげるアベノミクスで財政健全化を進めると主張してきた。その政策はもはや限界だ。
成長戦略で後押しするはずの第5世代(5G)移動通信システムなどは海外に後れを取っている。経済を将来にわたってけん引する分野は見当たらない。日銀の大規模金融緩和も手詰まり状態だ。
財政健全化を進めるには、富裕層や企業の課税方法などを検討し、公平で安定的な歳入が得られるような改革が必要だ。無駄な歳出を抑え、必要な分野に集中的に投資していくも欠かせない。その場しのぎの人気取りに走らず、長期的視野でやるべきことに取り組まなければならない。
(12月21日)
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December 21, 2019 at 07:00AM
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