[東京 4日 ロイター] - 2020年の円債市場における金利見通しが分かれている。低下予想のシナリオは、景気の下振れや米国の大統領選挙の影響でリスクオフの流れが強まり、プラス利回りの超長期債への買いが強まるとの見方だ。一方で、世界経済が順調に改善すれば、日銀はマイナス金利政策からの脱却を目指し、金利上昇圧力が強まるとの予想も出ている。
市場関係者の見方は以下の通り。
●フラットニング、景気に下振れリスク 需給も悪くない
<野村証券 シニア金利ストラテジスト 中島武信氏>
日米ともにインフレが高まっておらず、2020年は日銀、FRB(米連邦準備理事会)とも利下げにも利上げにも動かないとみている。このため、円債相場も大きく動くことはない見通しだが、あえて方向性を予想するとすれば、金利は低下方向だろう。
米経済はISM製造業景気指数など主要指標が下方向。欧州経済は自動車の新排ガス規制が重しになりそうだ。景気に関してはダウンサイドリスクの方が大きい。一方で、各国とも金融政策、財政政策ともに余地が乏しくなってきている。
需給的にも20年は悪くない。20年度の国債償還は、日銀保有分とすぐ償還される2年債を除くと、33兆円程度と19年度に続き巨額だ。地方債や財投機関債、政府保証債も20兆円程度償還される見通しとなっている。一方で、20年度の国債新規発行額は32兆円強にとどまる。
足元で、プラス金利で発行されている国債は20年、30年、40年しかない。当初発行予定額は計21.6兆円(今年度、来年度は22.2兆円)。10年債がプラス金利なら、25.2兆円発行予定があるので吸収できるが、10年債がマイナス金利で推移すれば、超長期債に買いが集中する構図が続き、フラットニングが進む可能性が大きい。
10年最長期国債利回り(長期金利)の予想レンジ:マイナス0.20%─プラス0.05%
●米大統領選挙でリスクオフの動きも、イールドカーブはフラット化
<モルガン・スタンレーMUFG証券 エクゼクティブディレクター 杉崎弘一氏>
日銀は2%の物価目標の達成は難しいことから政策を据え置くというのが、市場のコンセンサスだ。このため、政策金利のリスクバランスを動かす海外金利の動向と需給の2つが、引き続き円債市場のドライバーとなる。
上半期については、円金利は現行の水準で推移するだろう。19年12月に米中通商協議がいったんまとまった格好となり、市場では楽観的な見方が広がっている。このため、米金利が2.0%近辺まで上昇した場合、円金利の上昇圧力も強まる。
下半期は米大統領選挙が注目材料。民主党が勝利した場合はリスクオフになるという市場参加者の見方が多い。民主党の勝利の確率が高まるにつれて、市場はリスクオフのシナリオを織り込む動きになる。米金利は低下し、それにつれて円金利も低下する。プラス利回りの超長期ゾーンは選好され、イールドカーブはフラット化していく。
リスク要因としては、市場のテーマが日銀の追加緩和のリスクよりも、マイナス金利の副作用をどのように緩和していくのか、という方向に転換しつつあることだ。来年いずれかのタイミングでイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の調整の議論が盛り上がった場合、金利上昇圧力が強まる可能性はある。
10年最長期国債利回り(長期金利)の予想レンジ:マイナス0.20%─プラス0.05%
●年後半は金利上昇、日銀のマイナス金利政策解除を予想
<パインブリッジ・インベストメンツ 債券運用部長 松川忠氏>
年前半と後半で異なるシナリオを描いている。年前半は、景気はそれほど良くならず、日銀も動かないため、長期金利でゼロ%プラスマイナス10bpのレンジ予想だ。
しかし、年後半になれば、新興国や欧州の景気が回復、日米に波及する中で、世界経済全体が徐々に良くなってくるだろう。そうしたなか、日銀のマイナス金利政策解除の可能性が高まるとみている。
マイナス金利政策の「先駆者」であったスウェーデン中央銀行が政策金利をゼロ%に引き上げた。グローバル景気が改善する中、マイナス金利政策の弊害や副作用にスポットがあたり、脱却の動きが世界的に広がってくると予想している。
マイナス金利脱却で警戒されるのは円高だが、世界的に脱却の動きが広がれば、為替への影響は限定的になる。銀行株主導で株価も上昇する。長期投資家にとって、金利はスティープ化よりも絶対水準がポイントだ。30年債利回りが1%超えた方が生保などにはメリットがあるだろう。
2%の物価目標に達していなくとも、マイナス金利の脱却は多くから歓迎されるのではないか。
10年最長期国債利回り(長期金利)の予想レンジ:マイナス0.10%─プラス0.40%
●金利は上昇方向、10年債利回りプラスならスティープニング
<アセットマネジメントOneの債券運用グループ、ファンドマネージャー 鳩野健太郎氏>
2020年の米国経済は相対的に堅調になるとみており、FRBは利下げには踏み切らないだろう。市場の利下げの織り込みが剥落した場合、米10年債利回りは2.2%近辺まで上昇余地がある。
日銀も金融緩和方向にかじを切っているわけではなく、現状の金融政策を据え置くとみている。米金利の上昇につれて、円金利も上昇していくが、長期金利がプラス圏に戻った場合、超長期ゾーンの金利水準が相対的に上昇するとみている。
過去を振り返ると、長期金利の居所次第でイールドカーブは全く違う動きとなる。長期金利がマイナス圏にある時は、ゼロ金利制約がある投資家がいることもあり、プラス利回りの超長期が選好され、イールドカーブに対してフラット化圧力がかかりやすい。
一方、長期金利がプラス圏になると、一部の投資家のトレーディング目的の取引が超長期ゾーンから長期ゾーンに代わる可能性が出てくる。18年に長期金利が0.15%まで上昇した時、7年ゾーンがゼロ%を超えるなど、先物のスクイーズが数カ月間続いた。長期ゾーンまでの金利上昇幅は緩やかとなり、イールドカーブがスティープ化していく。
長期金利は一時的にプラス0.1%を超えるかもしれないが、マイナス0.10%を実現する可能性は低く、金利は上昇方向にあるとみている。
10年最長期国債利回り(長期金利)の予想レンジ:マイナス0.10%─プラス0.10%
伊賀大記 坂口茉莉子 編集:青山敦子
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January 04, 2020 at 06:17AM
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展望2020:分かれる日本の金利見通し、日銀マイナス金利解除の見方も - ロイター
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