Sunday, August 23, 2020

【中国を読む】経済活動急回復 年後半は鈍化 日本総合研究所・関辰一 - SankeiBiz

 中国経済は、これまでのところ大方の想定を上回るペースで回復している。政府は1月に厳しく経済活動を制限したものの、2月に新型コロナウイルスの感染拡大がピークアウトしたと判断するとすぐ、経済活動の再開を指示した。指示を受けた企業が生産再開を急いだ結果、3月には工業生産が前年並みの水準まで回復した。

 需要側では、不動産開発投資の回復が顕著である。政府が3月に不動産価格抑制策を緩和したほか、政策金利を引き下げ、中小企業向けの銀行融資拡大を指示した結果、不動産市場へ資金が集中的に流入したためである。

 ◆景気対策でてこ入れ

 インフラ投資や情報通信業の投資も拡大している。政府は景気てこ入れのため、2月にインフラ投資計画の前倒しを要請した。地方債発行枠の拡大を通じて、インフラ投資や第5世代(5G)移動通信システム関連投資などに代表される「新型インフラ投資」の財源も確保した。国有大手通信事業者である中国移動は、5G関連投資額を昨年の240億元(約3665億円)から今年は1000億元へ大幅に引き上げる計画である。

 飲食・宿泊などの消費回復は遅れているものの、家電需要は急回復している。在宅時間をより快適に過ごすために、買い替えを前倒しにする動きがみられるほか、地方政府がアリババなどのインターネットショッピング運営会社と提携して配布した商品券も需要を刺激している。

 自動車需要も、外出制限で抑制された分の需要が顕在化したこと、公共交通機関を回避する動きが拡大したこと、政府が購入規制を緩和して購入補助金を打ち出したことを受け、筆者の当初想定より早いタイミングで回復した。

 さらに、輸出も足元で前年並みの水準まで持ち直している。マスクなどの医療用品、テレワーク・5G関連の情報通信機械などの需要が拡大したほか、コロナ前に受注した分が出荷されたためである。

 ◆世界の停滞足かせ

 もっとも、在庫の急増、世界経済の停滞、家計や企業の所得不安、自動車需要の弱含み、不動産市場の過熱化など、先行き景気のマイナス要因も少なくない。まず、実需の有無を問わずに工場の稼働率を引き上げた結果、工業在庫は早くも2月に前年を大きく上回る水準へ急増した。足元では稼働率の引き上げを見送り、在庫のさらなる増加を回避する動きがみられる。当面、在庫調整が工業生産の足かせになると見込まれる。

 加えて、世界経済の停滞によって、輸出が再び減少に転じると予想される。世界では新型コロナの感染拡大が続き、主要国では新規感染者数のリバウンドを受けて活動制限を再強化する動きがみられる。この結果、中国の製造業購買担当者指数(PMI)の新規輸出向け受注指数は、依然として良しあしの目安となる「50」を下回る水準である。

 また、家計や企業は所得不安を払拭できず、個人消費・設備投資の回復力は弱いものになろう。実際、消費動向調査の収入の見通し判断指数(DI)は過去最低水準となっているほか、民間企業も資金繰り難に直面している。

 8月上旬の主要メーカーの自動車販売台数が再び前年割れに転じたことも注目される。外出制限で抑制された分の需要が一巡することで、自動車販売の回復ペースは鈍化する見込みである。

 さらに、政府は不動産市場の沈静化に向け、不動産価格抑制策を再び強化する方針である。例えば、広東省深セン市政府は7月15日、36カ月以上の納税を住宅購入条件とするなどの住宅価格抑制策を発表した。こうした政策により、住宅需要と不動産開発投資の急拡大にブレーキがかかると予想される。

 以上より、先行き中国経済は政府の各種施策を背景に引き続き回復傾向をたどるものの、回復ペースは鈍化すると見込まれる。

                   ◇

【プロフィル】関辰一

 せき・しんいち 2006年早大大学院経済学研究科修士課程修了。08年日本総合研究所入社、19年から調査部主任研究員。拓殖大学博士(国際開発)。専門分野は中国経済。著書に「中国経済成長の罠」。38歳。中国上海出身。

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