Wednesday, September 30, 2020

コロナ後の米経済に重荷、人口動態と政府債務 - Wall Street Journal

現在のパンデミックと景気後退の結果、出生数が30万~50万人減る可能性があるという

Photo: John Minchillo/Associated Press

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター.

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 もしあなたが短期的な経済見通しについて懸念しているならば、悪い知らせがある。長期的な見通しはもっと悪いということだ。

 米議会予算局(CBO)が先週発表した最新の長期財政見通しでは、次のような厳しい数字が示された。今後30年間の年間経済成長率は平均でわずか1.6%にとどまる。これは1年前の予測を約0.25ポイント下回っている。2040年代にはわずか1.5%に低下する。米国のトレンド成長率がこれほど低かったことは1930年代以降ない。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、こうした成長率低下の原因のごく一部にすぎない。要因の大半は、もっと長期的な力、具体的には人口動態と生産性だ。

 もちろん、経済見通しというものはすべて、本質的に知識や経験に基づいた推測である。遠い未来に関する見通しは特にそうだ。こうした見通しの前提が、後になって間違いだったと判明することも多い。特にCBOは、恐らく起きないであろう特定の事態をも前提に含めることを求められている。ドナルド・トランプ大統領が導入した個人所得税の減税措置が、現在の法律で規定されている通り2026年にすべて失効するという想定も、その1例だ。

 とはいえ、CBOの見通しは有益だ。それはCBOが、成長率の変動要因についてわれわれが現在知っている全てのことを体系的に組み合わせ、内部的整合性を持つ未来予測のシナリオを作り上げているからだ。

 パンデミックに伴う景気後退がそのシナリオに及ぼす影響は驚くほど小さい。CBOの見通しによれば、経済成長率は今年は急激に落ち込むが、その後は急上昇

し、結果的に今後10年間の成長率は以前とあまり変わらないものになる。

 だが、その後の数十年の見通しは暗い。大きな理由の1つは、既に進行中の人口動態的な動きにある。メリーランド大学の経済学者メリッサ・カーニー氏とウェルズリー大学の経済学者フィリップ・レビーン氏は最近のリポートの中で、失業率が上がると、予想通り出生数が減少することを示す研究を引用している。両氏はまた、1918年のインフルエンザ(スペイン風邪)のパンデミックに関連した不透明感や不安と軌を一にして翌年の出生数急減が起こったと指摘している。いずれのケースでも、出産は単純に先送りされたわけではなく、女性が生む子どもの数が減っている。両氏はこれらを総合し、現在のパンデミックと景気後退の結果、出生数が30万~50万人減る可能性があると考えている。

 これはCBOの予測と似ている。CBOは合計特殊出生率(1人の女性が生涯で生むと予想される子どもの数)が来年1.6に落ち込むと予想している。これは少なくとも過去1世紀で最低の数値であり、各世代の人口がそのまま入れ替わる水準とされる2.1を大きく下回る。こうした出生数の動向は、20年後に労働力となる人口が減ること、そして新たに親になる人が減ることを意味する。

 米国は出生率低下を移民で埋め合わせできるかもしれない。だがCBOは、コロナウイルスに関連した渡航制限、査証(ビザ)発行手続き能力の縮小、法的地位を持たない外国人の入国減少により、移民の流入数が既に減っていると指摘する。このため、向こう10年間の移民の数が昨年の予測より250万人少なくなるとみている。

 結果として米国の人口は減り、2046年の時点で3億7400万人になると予測される。これはCBOの昨年の予測より1000万人少なく、2012年の予測より3400万人少ない。

 CBOは近年、推計人口を繰り返し修正しなければならなかったが、再び修正する必要があるかもしれない。CBOは出生率が2026年には1.9に回復すると予想しているが、カーニー氏は否定的だ。「仮に急速な景気回復があり、新型コロナが出生率に長期的な影響を及ぼさないとしても、出生率は全般に下降傾向をたどってきている」と同氏は指摘する。また、出生率の低下は経済面から移民が必要との主張を強めるものの、必ずしも有権者が移民を容認するようになるとは限らない。現に米国や欧州では近年、移民への反発が起きている。

 今後数十年にわたり、米国の労働者数が以前に予測されていたより減少するだけでなく、労働者の生産性も低下するとみられる。CBOは2031~50年の1人当たり労働生産性の伸びを大幅に下方修正した。要因は幾つかある。その1つは、労働人口の縮小は企業の投資縮小につながるということだ。また、人口の高齢化で住宅需要が減少し、それが将来の投資や成長の低下につながるともCBOはみている。

 誰もが話題にするのを避けたいと思っている重要な問題は、連邦政府債務だ。CBOの予測のような従来型の経済モデルによれば、政府債務が貯蓄を吸い上げ、民間向け投資を締め出すクラウディングアウトが起きる。米国の債務は今まさに拡大しようとしている。CBOの予測によると、2049年の対GDP(国内総生産)比の連邦債務残高は昨年実績の79%から189%に増加する。昨年の予想では144%だった。要因はパンデミック関連の借り入れ、議会による裁量的支出の拡大、高額な費用のかかる医療保険に対する課税免除だ。

 「クラウディングアウト」モデルは近年あまり有効性が見られない。財政赤字の急増と超低金利が同時に見られてきた。これは恐らく、世界的に投資が貯蓄に比べて長期的に低迷しているためだろう。金利は低水準にとどまる見通しで、政府債務は悪影響をもたらすことなくいつまでも膨らみ続けるかもしれない。しかしこのシナリオでは、米国の投資と生産性の伸びはCBOの現在の予測よりさらに低くなる可能性が高い。これは受け入れられる未来ではない。

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