Friday, October 30, 2020

大阪市財政局の行政コスト試算波紋 揺れ動く見解 - 大阪日日新聞 - 大阪日日新聞

大阪ニュース

2020年10月31日

 大阪市を人口規模の等しい四つの自治体に分割した場合の標準的な行政サービスの費用「基準財政需要額」が、年間約218億円増えるとした市財政局の試算について、市の見解が揺れ動き波紋を呼んでいる。市を廃止し、4特別区を設置する「大阪都構想」が実現した場合に、住民サービスが維持できるのかという市民の疑問は解消されないまま、松井一郎市長が報道したメディアを批判し、東山潔局長が謝罪して試算を撤回するという異例の事態だ。

会見する東山財政局長(左)と手向副首都推進局長=27日、大阪市役所

 基準財政需要額は、自治体に配る地方交付税を算定する際に使う指標。地方交付税制度は標準的な行政サービスを維持できるように、基準財政需要額から「基準財政収入額」(自治体の標準的な収入の法定普通税の100分の75)を差し引いて、不足分を国が補う。東京都は税収が多く交付税は不要だが、大阪市は交付税に頼っている。

 市財政局は、報道機関の求めに応じて需要額を試算。試算に必要な補正については、人口によって変動する段階補正のみを考慮し、都市化に関わる態容補正などは省略していたため、「特別区制度に則した正確な試算ができない」ことを前提として情報提供していた。

 東山局長は27日、都構想を推進する副首都推進局の手向健二局長とともに記者会見し、試算した数字について「単純に現在の大阪市を、四つの政令市に分割する簡略な方式で試算した。特別区の制度設計に基づいたものではない」という市としての見解を示していた。

 しかし、29日には、試算が段階補正しか考慮していなかった点を「架空の数字。捏造(ねつぞう)に等しい」と松井市長から指摘されたため、「交付税の算定ルールにはない考え方に基づくものとなり、実際にあり得ないもの」として撤回するに至った。

 指摘を受けるまでは「(人口によって必要な費用が増減する)スケールメリットの移動」の参考にする意義があるという考えだった。

 松井市長の「報道機関の誘導に従ってつくったあり得ない数字」という主張に対して、東山局長は「(取材を受けた職員からの説明で)私が誘導と考えた」とする一方、報道機関の取材については「行き過ぎだとは考えていない」と述べた。

 共産党の山中智子市議は30日に記者会見し、「4区に分かれたら経費は上がり、国から来ないということを隠し続けたことが問題」として、コスト増が交付税で補われないことを強調した。(木下功、椎葉直、藤木俊治)

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