約1年半におよぶコロナ危機によって、日本の経済政策や産業界が抱える様々な課題が顕在化しました。今後の経済の立て直しに向け、これらの課題をどう乗り越えていけばいいのか。
海外との違いにも目を向けつつ、問題の背景や克服への道筋を探っていくと、コロナ前から日本が抱えていた五つの「もろさ」が浮かび上がってきました。
もろさ①危機への備えなき政府
まず注目したのが、政府のコロナ対策です。3月中旬までに主要7カ国(G7)が打ち出したコロナ対策の規模は、資金繰り支援の融資などを加えると、日本が国内総生産(GDP)の44・2%と最大です。ただ、巨費を投じたにもかかわらず、国民の不満は小さくありません。支援を必要とする人に政府や自治体が迅速にお金を配れていないことが背景の一つにあります。
国民1人当たり一律10万円の現金給付に始まり、様々なコロナ対策の実行で遅れが出たのはなぜなのか。その裏には、お金を早く配るデジタル基盤の弱さといった技術的な問題だけではなく、危機への備えを欠いた政府の「もろさ」がありました。
もろさ②深刻な男女格差
また、立場の弱い人に痛みが集中したのもコロナ禍の特徴の一つでした。女性へのダメージが大きく、「シー・セッション(She―cession=女性不況)」という造語も生まれました。国際労働機関(ILO)のデータは、多くの国で雇用の減少率が、男性より女性の方が大きかったことを示しています。とくに日本では、飲食や宿泊など大きな打撃を受けた業種で働く女性が多く、雇用調整の対象にされやすかったという側面があります。
コロナ前からある賃金などの男女格差が、コロナ禍でより深刻化し、経済回復への足かせになりかねない。そんな日本の「もろさ」も見えてきました。
もろさ③低水準な生産性
一部の地域でいまも続く外出自粛や時短営業の要請は、飲食や小売り、旅行といった対面型のサービス業を直撃しています。これらの業種はもともと、国際的に低水準にとどまる生産性という「もろさ」を抱えていました。
国内の人口減少による市場の縮小や人手不足といった課題もあり、本来は急いで手を打つべきでしたが、本腰を入れて取り組めていませんでした。それがいま、コロナ禍に背中を押される形で、生産性向上をめざした業態転換やデジタル化などの動きが加速しています。
働き方も大きく変わり、職場や出勤時の感染を防ぐため、多くの企業でテレワークが一気に進みました。ところが、最近は元の働き方に戻す企業が増え、テレワークの普及率は3割未満で頭打ち。とくに地方ではほとんど普及していません。原因を探ると、海外と比べ、テレワークで生産性が下がったと感じている人が多いようです。
もともとテレワークは感染対策ではなく、東京一極集中の是正や、子育て・介護との両立など、日本の働き方を改善する観点で導入が呼びかけられていましたが、コロナ前はほとんど普及していませんでした。原因は、意思疎通や労務管理の難しさ、対面前提の決裁手続きなど様々です。コロナで再認識されたこれらの「もろさ」の克服が、定着に向けたかぎを握ることになりそうです。
もろさ⑤上がらない物価
コロナ危機に際し、各国の中央銀行は大胆な金融緩和で大量のお金を市場に流し込むことで、経済の落ち込みを防ごうとしています。しかし、その大量のマネーは株式市場や仮想通貨だけでなく、原材料を扱う市場にも流れ込み、穀物や原油、鉱物などの価格高騰を招きました。
ところが、日本では、そのコスト増を製品やサービスの価格に上乗せするのに二の足を踏む企業が多く、物価がなかなか上がらない状態がコロナ前から続いています。今回も同じ現象がみられ、経済活動の再開で物価が急上昇している欧米とは全く違います。
物価の低さは消費者にとって朗報にも聞こえますが、長期的には、賃金も上がりにくく、低成長が続くという悪循環に陥りかねません。この「もろさ」をどう克服していけばいいのか。高い物価についていけるだけの賃金の上昇に加え、物価が上がらないことに慣れてしまった消費者の意識をどう変えられるかもかぎを握りそうです。(伊沢友之)
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July 31, 2021 at 01:00PM
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日本経済「五つのもろさ」 コロナで顕在化、克服の道は - 朝日新聞デジタル
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