自社開発のスマート家電や、国内外のIoT製品をオンライン販売するD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)家電メーカー「+Style(プラススタイル)」。2018年よりAmazon.co.jpでの販売を開始し、21年6月のビッグセール「Amazon Prime Day(プライムデー)」では、期間中の売り上げが過去最高となる1億5000万円を記録した。Amazon攻略の鍵はどこにあるのか。
アプリとの連係で、CRMが容易に
「+Style」は、ソフトバンク社員として米スプリントとの協業のため米国に駐在していた近藤正充氏(現BBソフトサービス取締役執行役員)が、帰国後の2016年に立ち上げた新規事業。米国駐在時に活用していたIoT製品の便利さと、それらを入手しやすくしている「キックスターター」や「インディーゴーゴー」などのクラウドファンディングサイトから着想を得た。当時、気になる商品を見つけては各サイトで購入し活用していたことから、日本でも同様に海外発の最新IoT製品を手に入れられないかと考えたという。
ソフトバンク社内で事業化後、法人化したのは18年10月。21年10月には、同じくソフトバンクグループのBBソフトサービスと経営統合している。
現在は自社ECサイトのほか、Amazon.co.jp、楽天市場、PayPayモールなどで販売。売り上げ構成比はAmazonが最も多く、全体の半分強。次いで、楽天市場、自社ECサイト、PayPayモールという順で並ぶ。取り扱うのは、自社開発のスマート家電のほか、国内外のIoT製品。売り上げ規模は半々程度だ。
18年の法人化後、自社ECサイト以上にAmazonに注力し、マーケティング費用を投じてきた。集客が必要な自社ECサイトと違い、Amazonには潜在客が存在するからだ。また+StyleではIoT製品をメインに扱っていることから、製品を動かすために専用のスマホアプリと連係する必要があり、このアプリを使ってCRM(顧客関係管理)展開ができる。そのため初回、リピート関係なく「製品はどこで購入してもらっても構わない」(近藤氏)。
ここが、+StyleがAmazonで販売する他の消費財メーカーとの大きな違いと言える。実際、ほぼ全ての購入者がアプリと連係していることから、アプリのプッシュ通知を通じた新商品やセールの案内も可能だ。
自社開発のスマート家電6品投入で、1桁変わった売り上げ
Amazonでは18年から自社開発製品も扱ってきたが、当時はあくまでもテストマーケティングの位置付け。19年から本腰を入れ始め、同年8月、「満を持して発売した」(近藤氏)というスマート家電を6品投入した。
それに合わせ、Amazonの+Style公式ストアでスマホからの見やすさを意識した商品ページの作り込みや、Q&Aの充実、商品画像に説明文を挿入するなど商品ページのリッチ化を行った。さらに、記者向けの発表会を行い、Amazon外での露出も増やすなどさまざまな施策を展開。その結果、売り上げは以前と比べ1桁変わったという。
「新商品投入時に時間をかけて対策を行ったことで、実績につながった」(近藤氏)と、Amazon販売の手応えをこのタイミングで感じたという。この後、コンサルティング会社を入れて広告運用のノウハウを学び、それを実践することでさらに売り上げを伸ばした。
利益率高くカートを取得するため、ツールを最大活用
+Styleでは、自社開発のスマート家電以外にも世界中のIoT製品を販売しているため、競合他社と同一型番の製品も多く取り扱う。そこで近藤氏が重視しているのが、「ショッピングカートボックス(カート)」の取得戦略だ。
Amazonでは、複数のショップが同一型番の商品を扱う場合、1つの商品ページにまとめられてしまう。その際、1ページ目の目立つ位置に表示される(=カートを取得できる)のは1店舗のみという狭き門だ。カートを取れれば売り上げが伸び、検索連動型広告の「Amazonスポンサープロダクト」も有効活用できる。つまり、売り上げや利益率に直結する。
そこで、+Styleでは海外のツールを使い、各商品への検索流入ワードを調査するほか、掲載している商品において競合他社は何台売っているのか、在庫がいくつ登録されているかといった情報もリサーチしている。
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