1990年代からグローバリゼーションに警鐘を鳴らしてきたハーバード大学の経済学者ダニ・ロドリックは、現代の課題はグローバリゼーションによって良質な仕事が失われたことであり、今後も規制がなければ、さらに格差が広がっていくと指摘する。そして今後必要なのは福祉国家モデルではなく、良質な雇用の創出に焦点をあてた経済政策だと主張する。 【画像】経済学者ダニ・ロドリック「福祉国家はもはや解ではない。問題は良質な雇用が絶対的に不足していることだ」
グローバリゼーションのもたらした弊害
ハーバード大学の経済学教授ダニ・ロドリックは、1997年に『グローバリゼーションは行き過ぎか?』(未邦訳)という書籍を出版し、グローバル化に対して警鐘を鳴らした。貿易や金融の自由化が正しいと一般的に考えられていた当時、それに対して異議を唱える数少ないトップエコノミストの一人だった。 本紙がロドリックに話を聞くことにしたのは、研究と政策立案の両面で、経済学の世界がロドリックの提言に追いついてきているからだ。資本規制や産業政策の否定などの考えに対してロドリックは懐疑的だったが、そのような教義はすでに影を潜めている。グローバル経済は伝統的なモデルに沿って動いてはおらず、政治家はグローバル化や不平等の拡大に対する激しい反発と戦っている。 ──今年はジョー・バイデンが大統領に就任しましたが、まずは、アメリカの政権交代についてのご意見を伺いたいと思います。 トランプが政治的に利用してきた問題については、必ずしも解決したとは言えません。トランプの出現は、アメリカだけでなく先進国全体で起きている経済的混乱と経済的分極化の結果です。それを右派ポピュリストが排外主義や民族主義の路線に沿って利用したのです。 最近まで、左派はほとんど活動していなかったように思います。バイデンの政策に見られる通り、民主党の経済政策は大きく左傾化しています。しかし中道左派はもっと緊急にもっと早く、たとえば世界金融危機後に変化すべきでした。 ──このような混乱は、30年以上前からあったことです。民主党や他の同様の勢力は、このような変化に対してもっと早くから適切に対応しなかったのでしょうか。 90年代のクリントン民主党、英国労働党、ドイツの社会民主党、フランスの社会党は、基本的に新自由主義モデルを採用し、それを単純に進めることに夢中になっていたと思います。貧しい人たちへの支援を少し増やすなどはしていたかもしれませんが。彼らにはシステムを根本的に変えるようなアイデアや政策ビジョンはなく、それは金融危機の後にはっきりと見て取れました。 実際、伝統的な保守政党と同様かそれ以上に、グローバリゼーション、欧州単一市場、金融・資本の自由化を推進しました。ヨーロッパでこれらの政策を強力に推進していたのはフランスの社会党でした。 ──このような変化をもたらしたのは、経済かあるいは文化かという議論があります。経済が原因であることを否定する人々は、ポピュリスト右派を支持するのは、最も貧しい人でも最も苦しんでいる人たちでもないと言います。 確かに、少しずつ文化的な傾向は出てきています。社会的保守派とリベラル派の間の分裂が広がり、アメリカでは人種による政治の問題が非常に大きくなっています。しかし、対中貿易にしてもヨーロッパの緊縮財政にしても、経済的なショックが極右政党や極右ポピュリズムへの支持を拡大させる背景になったというのは実証的に明らかです。私たちが必要とする説明は、よりグローバルなものです。 2016年に大統領に当選したのが、もしトランプではなくバーニー・サンダースだったら、銀行や大企業、国際貿易が犯人であるような、別のタイプのポピュリズムが生まれていたでしょう。でも、そこで語られるポピュリズムの中身は大きく異なります。 念のために加えて言うと、私はバーニー・サンダースが民主主義を阻害しているとは思っていません。これが右派と左派の大きな違いで、右派ポピュリズムは本質的に民主主義を阻害する一方、左派ポピュリズムはそうはしないのです。非常に有害でもっと恐ろしくなりうる右派ポピュリズムから身を守るために、今はより多くの左派のポピュリズムが求められていると言えます。
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May 15, 2021 at 09:00AM
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